趣味で時効になった事件を捜査する警察官がいましたが
趣味でフリーペーパーを作るデザイナーになりました。
hito to hitosara
ひととひとさら
と名付けました。
タイトル通り、毎号「人」と「皿」を1組ずつ取り上げてご紹介する、極々私目線な内容です。
記念すべき第1号では、 石狩市の珈琲やさん「暮らしと珈琲みちみち種や」のお二人と、東川町のレストラン「Vraie(ヴレ)」のシュパウロウをご紹介しています。
ゆるゆると設置してくださるお店を増やしていきますので、よければぜひお手にとって美味しい珈琲やワインや紅茶を片手に、「あの人の生活と あの店のひと皿に思いを馳せる珈琲1杯分のおはなし」をお楽しみください。
合わせて、「うちに置いてもいいんだよ」という心やさしきお店も随時募集しております。
なぜフリーペーパーをつくったのか
制作期間中、友人に「趣味でフリーペーパーを作っている」と話したところ、「ひまになったの?」と聞かれました。笑
学生の頃、”こんな素晴らしいクオリティのデザインが無料だなんて!”とまるで宝探しのように街中を歩いていたのですが、時々その中でとても素晴らしい記事やアートに出会えることがありました。
社会人になってなかなか好き勝手なデザインはできないということを知って、友人たちと日曜の朝7時にコーヒーショップに集まって限定50冊のフリーペーパーを取材から編集、出力、綴じて配布するところまで作ったりしていたのもいい思い出です。(もうあんなことはできない)
きっとその頃から私のフリーペーパー好きは続いていて、今でもステキな冊子やカタログに出会うと心踊ります。
ある時、いつもは持っている本を持たずに行ったカフェで読んでみたフリーペーパーに、以前先輩に連れていってもらったオシャレなイタリアンレストランのシェフがインタビューに答えている記事がありました。
その頃は20代前半のひよっこで、そんなすてきなお店に行くことはなくて緊張もしていたのだろうし、頑固おやじ(のようにみえた)寡黙なシェフを少し怖いと思っていたりもしたのです。
なのに料理はとんでもなく美味しくって、きっとまたここに来られるようにちゃんと働こう、とフレッシュでぴちぴちの私は思っていました。
そのフリーペーパーにはシェフがこれまで生きてきた中の転機や料理へのこだわりを決して多くはない言葉で語ったこと、時々照れ臭そうに笑いながら取材は苦手そうなのに一生懸命伝えようと話した温度感や人柄が伝わってきました。
月並みな表現ではありますが、こんなに素晴らしい料理をつくって、愛されるお店を続けている人もたくさんの経験があって今に至っていて、しかも今も試行錯誤をしているのか、ということに本当に感銘を受けたのです。そして頑固おやじ(なのであろうと思っていた)も、優しいし照れたりするのだ、とうれしくなったのです。
そのフリーペーパーはそれから何度か見返して、今も大事にとってあります。
それから10年ほどの時間がたって、私もお仕事以外で伝えられるなにかはないものか、と思った時、周りには本当にすばらしい人たちがたくさんいて、その1人1人にたくさんの物語があるんだなとあらめて気づいたのです。
ライターではないので、文章も荒削りですし、想いがあふれすぎて読みにくいかもしれません。
カメラマンではないので、写真もプロのようにはいきません。
不定期発行と逃げ腰なので、2号はいつになるのかもわかりません。
それでもなにかやってみたくて、フリーペーパーはじめました。
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当時友人たちと自主制作していたフリーペーパー。
少部数ゆえに手渡し紙と称して回し読みをしてもらうスタイルだったので図書カードのように記名できるものを設けて
さらに痛みにくいようにカバーをつけていた。
暮らしと珈琲 みちみち種や
第1号を作る時、お話しを聞くのは誰がいいかなと考えました。
先に書いた通り、私の周りには本当に多才で、経験豊かな楽しい人がたくさんいます。
そんな中、私も不思議に思うことがあった2人にお願いをしてみました。
吸引力という言葉がぴったりだなって思うんです。
なんだかわかんないけど最初から心を開いて話してしまう人っていませんか。この2人はまさにそう。
ご夫婦なのか、姉弟なのか、ビジネスパートナーなのか?
たゆうってなかなかない名前だけど本名なのか?
店名の由来ってなんなのか?
お店はないのか?
ぽろっと聞いてしまえばなんでも答えてくれる2人だけど、あえて取材としてお願いをしました。
しかもフリーペーパーのテーマは「あの人の生活と あの店のひと皿に思いを馳せる珈琲1杯分のおはなし」。
珈琲やさんが第1号なんて気が利いているではないですか。
だから今回このフリーペーパーを読んでくださる時には、みちみち種やさんの珈琲を飲みながら読んでもらえたら、なおうれしいなと思うのです。(私のオススメは”あわい”ですが、各店に届けているオリジナルブレンドもそれぞれ美味しいです。)
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取材はたゆうさんの美味しいお昼ごはんのあと、哲平さん自ら美味しい珈琲をいれてくださった。
猫たちに癒された楽しい取材の時間。
Vraie(ヴレ)
一皿はヴレの料理にしようって決めていました。
札幌に「モントルグイユ」としてあった頃から、なんども私を鼓舞して、鍛えてくださった大好きな料理だったから。
でもいざ一皿にしぼりこむ、となると悩みました。
好きゆえに、シェフのスペシャリテも知っているがゆえに、1つだけをピックアップするってとても難しい。
そんなことを思いながら東川のお店を訪ねてみたら、小さな衝撃が待っていて(詳しくはぜひ本編を読んでみてください)そこからはすっと迷うことなく今回のシュパウロウになりました。
シュパウロウ、モンゴルのお料理ですからね。
ヴレ、フレンチレストランですからね。
このフリーペーパーをお届けにお店に行ってきましたが、感動は増すばかりです。
ひと皿、ではないけれど、お料理の数々をぜひみて、そしてご賞味あれ。
そして行く時にはできればディナーで。車は置いて、自然派ワインとゆっくりじっくり楽しんでください。
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なにを食べても後悔はない!村上シェフのお料理たち。
冬の夜は暖炉に火が入って、さらに落ち着く店内。
人とひと皿は私を救う
テーマにした「人」「皿」は私を救ってきてくれたもの、というのが共通点。
そしてこれからも、なにか困難にぶつかる時、悲しかったり寂しい夜、
きっと助けてくれるのは大事な人たちと、美味しい料理だと思うのです。
趣味ではじめたことだけど、
読んでくれた誰かの新しいなにかが生まれるきっかけになったりしたら
こんなにうれしいことはないなって思っています。
第2号ができあがるように祈っていてください。
追伸:
紙は「片艶クラフト」です。
ぴよっこだった私が本の奥付に使われているこの紙に一目惚れして、会社に出入りしていた印刷会社の担当さんに初めて自分から声をかけて調べてもらった思い出の紙種です。包装紙によく使われていて、いろいろなメーカーから様々な片艶(片面つやつや、片面ざらっと)があります。このツンデレのようなギャップが大好きです。本当はもっと薄いとパリパリと気持ちがいい質感なのですが、きちんと読んでほしいから、少し厚めにしました。
そして今回紙面のあちこちに登場するのは、みちみち種やさんのパッケージに登場する猫たち。個性的な表情にも注目です。